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進化するごみ袋ができるまで Part2:どのように進化するか〜ねずみ忌避剤入りごみ袋の場合

2024.02.19

進化するごみ袋は、国内で発生した使用済み廃ストレッチフィルムを100%使用して、CO2の排出削減と国内の資源循環に貢献しています。

そんな進化するごみ袋が出来るまでの流れを追い、廃棄物業者でも意外と知らない、どのようにごみ袋が作られているかを全2回にわたってご紹介しています。

第2回である今回は、以前にご紹介した「ねずみ忌避剤入りのごみ袋」の最新情報をもとに、どのように新しく進化しているのかをご紹介していきます。

ねずみ忌避剤入りのごみ袋とは

ねずみの嫌がるミント系ハーブの香料を配合した香り付きごみ袋で、餌となる生ごみをねずみが齧ることを防止することを目的に、白井グループ様と大阪和田化学工業によって共同開発されました。

東京都千代田区は、相次いで報告される区内のねずみ問題(生ごみの袋を齧られるなどの衛生問題)への対策のため、当メディアでもご紹介した一般社団法人 東京クリーンリサイクル協会(TCR)様との協定を1月に締結しました。ねずみ忌避剤入りごみ袋はその目玉の1つです。

白井グループ 菊池 里美 様へのインタビューをもとに、本製品の特徴と、どのように開発したのか、そして協定について見ていきましょう。

千代田区との協定について

―まず、菊地様についてお聞かせください。

白井グループの菊池里美と申します。私はいま、白井グループとして大阪和田化学さんとともにねずみ忌避剤入り袋の開発・改良を行うのとともに、TCRとして行政や鍛冶町2丁目をはじめ町会・商店会さんとの窓口としての事務局、つまりお客様と実際に回収等を行うTCRの繋ぎ役として動いています。

 

今回、千代田区と締結された協定について教えてください。

2020年のコロナ禍からアフターコロナと呼ばれる2023年を経て、都内の繁華街ではねずみによる被害報告が急増しました。そのため、千代田区ではこの課題に対する提案を受付け。 TCRがこれに応募し、1月11日に協定の締結に至りました

▲締結式の様子。袋には千代田区の鳥と花である白鳥と桜がプリントされている。中央左がTCRの尾崎理事長、中央右が千代田区の樋口区長。

この協定はねずみが生息しにくいキレイなまちを目指し、その実現に向けて、町会や商店会の側面的支援(意識啓発、ルール策定支援など)を協働してやっていくという内容です。その対策の1つが新製品「ねずみ忌避剤入りごみ袋」の導入です。

 

―どんな経緯で協定に至ったのでしょうか。

本協定は、昨年の8月から始まった千代田区の「公民協働推進制度*」への応募が採択されたことで結ばれましたが、実はそれ以前から、千代田区の保健所より「鍛冶町2丁目でねずみ問題が報告されている」という情報を頂いており、白井エコセンター単独で少しお話をさせて頂いておりました。

(※公民協働推進制度…区と民間法人が協働して区の課題を解決する制度。区があらかじめ設定した課題への提案を募集する「課題型提案」と、民間法人が任意に区の課題を設定し、解決につながる提案を募集する「自由型提案」がある。ねずみ問題は前者の課題型提案の枠において、千代田区が設定していた課題)

白井エコセンターの加盟するTCRが、銀座の街でカラス対策を含めたごみ出しルールの策定と運用をすでに長い間行ってきた実績があるので、ぜひお力になりたいと考えていたタイミングで、ちょうど上述の制度ができたとお聞きしましたので、応募して協議やテストののち、2024年1月11日に協定締結に至りました。忌避剤入りごみ袋の検証も、これから区と協議しながら進めていきます。

 

―課題に対しての解決策として、ねずみ忌避剤入りごみ袋の開発を始めたのですか?

いいえ。今回のねずみ忌避剤入りごみ袋は、すでに大阪和田化学さんと白井グループで試験的に作っていたものなんです。白井エコセンターはTCRの事務局を担当しておりますので、TCRでも使ってみてはどうかとTCR内で提案をし、よい反応を頂けたので開発をはじめました。

 

―色々なタイミングが噛み合った形ですね。そもそも、なぜ開発をしようと思ったのでしょうか?

元々の着想は、弊社社員が発案したものです。弊社は再生材100%の進化するごみ袋の開発にも協力していたのですが、その中で「廃棄物由来の再生材はバージン材に比べて原料由来のにおいがどうしても残る」という問題がありました。

なので、そのにおいを緩和したり、いい香りを添加してマスキングできないかと考えていたのです。

というのも、日本では香り付きのごみ袋は馴染み薄いですが、東南アジアなどの海外ではごみ袋などの衛生用品に香りをつけるのが珍しくないそうです。香りの種類は、業務用トイレの芳香剤に近いかなと思います。

そこで、せっかく香りを添加するのであれば何か実用的な機能をもたせられないか考えていた時に、新型コロナによって各地の繁華街でねずみ被害が増えたというニュースが取り上げられるようになり、「ねずみが嫌がる香りをつけたらどうか」と考えたのが始まりです。

ねずみはミントのスーッとした香りを嫌うというデータがありまして、それに基づいてミント系などいくつかの香料を選定し、昨年の6月頃の実証実験を経て夏に開発、実際の製品になったのは10月末でした。

 

―これまで製品に使いづらかった食品系の容器包装を再生材としてごみ袋に使えるようになれば、再資源化が進みますね。

その通りです。いまは通常の「進化するごみ袋」と同じ100%廃ストレッチフィルム原料ですが、容リプラを混ぜていくとか、いろんな使い方ができるんじゃないかと考えています。

ねずみ忌避剤入りのごみ袋ができるまで

―開発に苦労した点はなんですか?

実は今も改良中で、いろいろ試行錯誤中なんです(笑)

元となるごみ袋自体は「進化するごみ袋」なのですが、そこにどんな香料をどれくらい添加するのか試行錯誤を続けています。特に、最初の実証実験は日本環境衛生センター様の協力のもと、実際のねずみで実験を行う大規模なものでしたので、どのような実験を行うかはいろいろと協議しながら進めました。

 

―実験についてご説明をお願いできますか?

わかりやすく言うと、ケージに1匹のねずみを入れて、2種類の餌箱を置きます。餌の上に香料入りビーズを敷き詰めたものと、比較用に通常のビーズを敷き詰めたものの2種類を用意して、香料入りをどのくらい食べるかという実験をいたしました。食べた量が少ないほど忌避効果があると考えられます。

この実験で、既に論文などでねずみが嫌う傾向があるというデータがあるミント系の香料と、シナモン系の香料、そして海外の衛生用品などに使われるミント系ハーブを複合した海外香料の3種類を比較したところ、海外香料をネズミは最も嫌がり、喫食量(食べた量)がゼロでしたので、今はそれを採用しています。

もちろん限定的な条件下での実験なので、実際に生ごみを入れて外に置いた時どれだけ効果を発揮するかはまだ未知の段階です。なので、千代田区さんとはその検証も含めてやっていこうという話になってます。結果や反応を踏まえて、香料の選択と、どのくらい混ぜるかの実験をこれからも色々試していきます。

 

―より効果の高いものを目指して進化を続けていくんですね。

そうです。それに、より忌避効果の高いものを目指していくのと同時に、なるべく香りを抑える改良も進めていきます。例えば飲食店さんの厨房に置くには、香りが強い袋は向きません。最終的に、ねずみが嫌がるけど人間はあまり感じないのがベストだと思いますので最適な配合を探ることが大切ですし、もちろんコストとの兼ね合いもあります。

他に、ねずみも生き物なので「嫌なにおいだけど危害はないな」と学習したら袋を齧るようになってしまうとも考えられます。運用を始めて1ヶ月ほどの現在はまだ齧られたという報告はありませんが、順応されないように一定期間で別の香料に変えることも考えています。まだまだ検討しなければいけないことはあります。

これから先広げていくには

―協定の範囲は千代田区全域ですか?

そうです。協定自体は千代田区全体が対象エリアですが、今はまだモデル地区として鍛冶町2丁目内でねずみ忌避剤入り袋での回収をしています。

鍛冶町2丁目の中でも、このごみ袋を使って頂いている事業者さんはまだ少ないので、今後どう増やしていくかもTCRの課題です。

―営業をするにあたって、お客様の反応はいかがでしょうか。

これは産廃全体に言えることですが、排出事業者さんとしては値段が最重要事項なので、そこは非常にシビアです。やはり産廃は自由契約ですので、安くならないなら既存業者のままがいいというお客様は多いです。

いまは区の事業ごみシール券と同じ料金で提供していますので、その上でねずみ対策という新しいメリットを感じてくださる事業者さんにアプローチをしていくのが第一だと考えています。

 

―事業者さんはねずみ問題を課題と感じているんでしょうか。

はい。私達が最初にお話を頂いたのも「ねずみが増えてるから何か対策できないか」というお問い合わせが町会さんから保健所へ入ったからなんです。なので、町会や商店会にとって、ねずみ問題は深刻なものだと思います。

もちろん千代田区のほかにもねずみに困ってる所は多くて、他の区から千代田区の保健所へお問い合わせが寄せられているそうです。

 

―ねずみ忌避剤入りごみ袋以外のねずみ対策と並行して進めていくのですか?

はい。メディアの報道のされ方だと、ねずみ忌避剤入りごみ袋に特に焦点が当たっていますが、TCRの提案としてはそれ以外にも「ごみが野外に置かれている時間を短くする」、「蓋つきの容器でごみを出す」という街・商店街が決定したルールに対応する、デジタルを活用した収集サービスの提供などがあります。それに付随して忌避剤入りのごみ袋を提供します。TCRと区は、協力して総合的に街のねずみ対策のお手伝いをしていきます。

 

―機能性のあるごみ袋を他に知らないので、ぜひもっと広がって欲しいですね。ゆくゆくは、全国の必要としている自治体に行き渡るといいと思いました。

そうですね。行政で使ってもらえるようになってきたら嬉しいですね。なお、今は収集サービスの1つとしてねずみ忌避剤入りごみ袋を提供していて、袋だけの販売をするかどうかは、まだ少し先の話だと思うので、決まっていません。

まずは、ねずみ忌避剤入りごみ袋を色んな場所で使っていただけるようになるといいなと思ってます。使って頂かないことには、改良点も見つかりませんから。

 

―区内、そして他の自治体に広げていくためにはどうすればいいでしょうか?

今まで銀座のみで活動していたTCRが23区に幅を広げたのが最近なので、まだこれからの組織なんです。知名度を上げるためにも、個別の排出事業者さんとの回収契約だけではなく街の美化活動に一緒に取り組んだり、町や商店会、区などとの協働を積極的にしています。


▲千代田区の清掃活動の際の記念写真

 

―100%再生原料というメリットがあり、ネズミ避け効果があって、ミント系の香りがして…特徴が多過ぎて、お客様への説明が難しいかもしれませんね(笑)この袋に正式名称はありますか?

まだありません。「忌避剤入りごみ袋」とか「進化するごみ袋のネズミ忌避剤入り袋」とか呼ばれています。特徴が分かるいい名称があればぜひアイディアを頂きたいです。

 

ーありがとうございました。

 

取材日:2024.02.07
白井グループ株式会社 様

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