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京都府亀岡市、指定ごみ袋で全国初の「地産地消」プラスチック循環モデルを構築

2024.06.20

「世界に誇れる環境先進都市」を掲げ、20年以上前から環境施策に取り組む京都府亀岡市は、市民から分別収集したプラスチックごみを指定ごみ袋の原料として再利用する、プラスチックの「地産地消」モデルを全国で初めて実現し、4月から販売を開始しました。

2023年にプラ新法に基づく再商品化計画の大臣認定を受け、㈱富山環境整備と大阪和田化学工業㈱と共同で、新しい再生ごみ袋を開発しました。今年度から、亀岡市内で年間373万枚の有料ごみ袋が販売され、その原料には市民から回収されたプラスチックが使用されます。

今回は、これまでの亀岡市様の取り組みと、今回の地産地消型ごみ袋の製造に至る経緯について、亀岡市 環境先進都市推進部 資源循環推進課様よりお話を伺いました。

環境先進都市 亀岡市の歩み

―亀岡市が環境先進都市として舵を切るようになった経緯をお聞かせ下さい。

資源循環推進課の名倉と申します。

亀岡市が熱心に環境施策に取り組みだしたのは2004年頃からです。本市では保津川の川下り(保津川下り)が古くから行われており、今も観光の目玉のひとつなのですが、2000年頃から川にプラごみが目立ちはじめ、海外から来られたお客さんの「ごみを掃除しないのか」という声をきっかけに、船頭さんがスタートさせた清掃活動が最初の一歩でした。

(画像出典:保津川遊船企業組より)

やがてその取り組みが市民活動へ広がってゆき、2012年、亀岡市は内陸の自治体で初めて「海ごみサミット」の開催地となりました。川を綺麗に保つことが海ごみ問題の解決に大きな役割を果たしていると痛感し、自分ごととして環境を変えていこうという機運が高まったのです。

そうした流れを経て、2018年に本市と市議会にて「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」が行われました。2030年までに使い捨てプラスチックごみゼロを掲げ、経済発展と環境保全の両立を進めていこうと宣言いたしました。

中でも大きな施策の一つが「プラスチック製レジ袋の提供禁止に関する条例」です。亀岡市内のコンビニなども含めた全小売店ではプラ製レジ袋を提供してはならず、紙袋等の生分解性の袋も無料で配るのは禁止というもので、市民の皆様にエコバッグをお使い頂き、使い捨ての風潮を見直して頂くための条例です。

また、実効性のある条例にしようということで、ルールを守って頂けないお店は名前を公表する罰則規定も設けられました。お陰様で、今ではお買い物をされる方の98%がエコバッグ持参という状況に達しております。

全国のレジ袋有料化よりも一歩進んだ施策ですが、今でもまだ「提供禁止」は全国で亀岡市だけです。今後ぜひ、一緒に取り組んで頂ける自治体が増えたらいいなと思っています。

 

―今回、市民から回収したプラスチックを原料に使ったごみ袋を全国で初めて販売開始したそうですが、どういったものでしょうか?

曽我部と申します。

本市では、いわゆる可燃ごみを「燃やすしかないごみ」、不燃ごみを「埋立てるしかないごみ」と呼んでおり、当然ごみ袋も「燃やすしかないごみ袋」「埋立てるしかないごみ袋」となっています。

本年4月より、この両方ともに市民の皆様が分別排出した容器包装プラ、製品プラを原料としたプラスチックを使用しています。

本市で回収されたプラごみは、破砕・選別・圧縮工程を経て、国内最大級のリサイクル施設をお持ちの㈱富山環境整備さん(以下:富山環境)の高度選別センターに運ばれます。

この施設で容器包装プラや製品プラを機械選別して、再生ペレットへとリサイクルします。こうして作られたペレットの一部が、大阪和田化学工業㈱さん(以下:大阪和田化学)の岡山工場に送られて加工され、新しくごみ袋になります。

このごみ袋は、大阪和田化学さんが展開する「進化するごみ袋」と同じく、廃プラ(廃ストレッチフィルム)を主原料とした100%再生ごみ袋です。現在は指定ごみ袋の原料の約10%が市内の再生プラで、亀岡市の指定ごみ袋として市内で販売されます。

指定ごみ袋と大臣認定の取得

―販売、つまり再商品化するのにプラスチックの再商品化計画の大臣認定が必要だそうですが、これはどういうものですか?

プラ新法における大臣認定とは経済産業大臣・環境大臣による認定のことですが、その説明にはまず自治体のごみ処理に係る法律について触れなければなりません。

自治体のごみ処理は、法律でかなり厳密にルールが定められています。まず、自治体は5年ごとに「ごみ処理基本計画」を策定して、それに基づいてごみ処理することが決められています。

本市は「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」をした2018年に、市のごみ処理基本計画を「亀岡市ゼロエミッション計画」と銘打って、埋立処分場を新設せず、これまで焼却・埋め立てされていたプラごみ等の再資源化を進める方針を表明しました。

しかし、自治体のプラごみ処理のルールは、また別の法律である容リ法(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律)で規定されます。この法律では通常、処理の委託先を自治体側で自由に選ぶことはできません。そのため、とれる選択肢が非常に限られてしまいます。

本市としては、廃プラをごみではなく資源として循環させたい。具体的には、マテリアルリサイクルができるリサイクラーさんに処理を委託したかったわけですが、それが可能になる制度が、プラ新法における大臣認定制度でした。

これならば亀岡市が独自に再商品化計画を立てて、国の認定を受けることで、リサイクラーの選定を含めたリサイクルルートの構築や再資源化計画を進めることが可能になります。本市もそれを活用して、プラスチックの一括回収ならびに再資源化を行うようにしました。

 

―従来の制度では市としてリサイクル推進の手段に制限があったので、自分たちで事業者の選定まで含めた計画を立てて、大臣認定を取られたと。

そうです。容リ法の通常の定めだと、市区町村側はどうリサイクルして頂くかを指定できません。そのうえ、委託業者さんが入札で決まるため毎年リサイクルルートが変わってしまいます。今回のように市の指定ごみ袋として再商品化をしていく場合、中長期的に安定してルートを確立することが必須ですので、毎年業者が変わるのは困ります。

その点、大臣認定の計画期間は最長3年なので、その間は安定してリサイクルが可能になります。この制度によって、市民の皆様が排出したプラからできた再生ペレットをごみ袋にして、また市民の皆様に還元するという、全国初の取り組みが実現いたしました。

 

―計画の立案から、実際の事業者の選定まで亀岡市で行ったのですか?

はい。事業者の選定・リサイクルの手法など全ての計画を本市で立てて、法的な規制をクリアして、きちんと資源化できる工程を踏んでいるのかどうかチェックされ、環境省・経産省の審査をクリアすることで取得できるのが大臣認定です。

細かいところで言えば、リサイクル設備がどの型式でどんな性能で、毎秒どのくらいの処理能力があって…ということまで詳しく審査していただきました。

 

―富山環境さんを選定された理由はなんですか?

まずは、富山環境さんが再生ペレットの再商品化ルートを持った事業者さんであることです。なおかつ、本市には埋立処分場を新設しない、つまり埋め立てを最大限減らす方針があるので、それに応じられる処理能力を有しているところがポイントでした。

また、大阪和田化学さんとの協業で再生プラを使ったごみ袋(進化するごみ袋)の製造・販売をしてきた実績をお持ちだった点も高く評価させていただき、選定に至りました。

 

―ごみ袋の開発に際して、富山環境さんや大阪和田化学さんと頻繁にやり取りをされてらっしゃったんでしょうか?

そうですね。あくまで主体は事業者さんの技術開発に依るため、本市が何かできることではないとは重々承知ですが、指定ごみ袋に使う以上はやはり一定の強度が必要です。

また、本市の場合は指定ごみ袋を導入して20年以上経ちますので、袋の色も市民の皆様に広く浸透しています。その色は変えず、さらに中身が見える透明度でないと収集時の危険がありますし、分別度合いの確認ができるかどうかに関わります。

僭越と思いつつも、そうした要望をいくつも出させて頂く形になりましたが、富山環境さん・大阪和田化学さんにはとても真摯にご対応いただいて、完成に至っております。

地産地消型 再生指定ごみ袋の持つ意味

―以前はバイオプラスチックを配合したごみ袋だったそうですが、今回の切り替えによってどう変わりますか?

仰るとおり、前の指定ごみ袋には生分解性のあるバイオプラスチックを25%使用しており、今回はリサイクルペレットを配合しています。いずれも使い捨てプラスチック削減に対するアプローチで、環境負荷を減らすものです。しかし、どちらかといえば、我々の目的は市民の皆様の環境意識の向上です。

自分たちで分別して出したごみがごみ袋となってまた戻って来る、これは非常にわかりやすく市民の皆様の意識向上に役立つと考えています。

 

―今のところ市民の皆様や、メディアの反応はいかがでしょうか?

本格的に市内へ流通するのはこれからなので、市民の皆様もまだまだ実物を見たことがない状態だと思います。メディアさんには少しずつご興味を持っていただけているかなというところですね。

 

―どういった形で市民への周知を図っていく予定ですか?

まずは、指定ごみ袋のパッケージと袋の表面に記載しております。

▲実際に販売されているパッケージ

 

他に直近では、市の広報誌での紹介とSNSでの告知があります。

また今後の展開として、亀岡市主体での環境学習の機会を設けるほか、本市のごみ収集を実際に行っている(公財)環境かめおかさんで環境学習をして頂いたり、市内の小学校を対象にごみ処理施設の見学等もしています。

それらの機会で「皆がちゃんと分別すれば、また資源として回ってくるんだよ」と伝えていく。また、環境政策として市内すべての小・中学生を対象に保津川下りやラフティングを催し、川に親しみながら、川からごみが流れて海洋プラスチック問題になることを啓発させて頂いていますので、そうした市民向け・子供向けの啓発活動を通じて、皆様に知っていただければと考えています。

 

―教育に力を入れていらっしゃいますね。

プラの一括回収について

―亀岡市は早くからプラの一括回収を行っていますが、どのような思いで開始されましたか?

本市はプラ新法が制定された令和3年より前にプラスチックの一括回収について検討を始めていました。というのも、環境省のモデル事業にご採択頂き、地域と期間を限定して、容器包装プラだけではなく製品プラも一括回収する実証実験を行っていたんです。

その実験で見たかったのは発生量と、本当にマテリアルリサイクルに回していくことが可能なのかどうかです。どの市区町村も同じだと思いますが、初めての試みなので、どれだけ発生があり、どれだけ異物が混入するか分からず、自治体としては非常に不安でした。

仮に異物混入で製造ラインが止まってしまうと市民生活にも支障が出ますし、今までリサイクルできていた分も焼却か埋め立てに回すことになってしまいます。それでは本末転倒ですので、情報を集めて慎重にシミュレーションを重ねて検討いたしました。

 

―小型バッテリー混入による火災などが全国的な問題になっていると聞いています。亀岡市では実際に一括回収を進めてみていかがでしたか?

そうですね。本市でも実際にモバイルバッテリーの混入は報告されていますし、現在進行系でまだ混入があると思います。外見はプラスチックで一見して分からないですから。

他県のとある施設が全焼したという事案も聞き及んでおります。幸いにして、本市はそこまでは至っていませんし、富山環境整備さんとも話し合って、仮に発火しても問題なく稼働を続けられることを確認させて頂けたので、安心してお願いできています。

 

―異物混入などに関しては、やはり環境先進都市として市民の理解度・協力度が圧倒的に高いように思いますが、いかがでしょうか?

仰るとおり、分別の出来不出来は、まさにこれまで進めてきた環境政策がものを言う領域だと思います。

行政といえど、一方的に「分別してください」と訴えても、市民の皆様と顔の見える関係性が築けていなければ、なかなかうんと言っていただけないと思います。なので、草の根的な活動によって醸成された環境意識が土台にあった上で現状が成り立っていると考えています。

亀岡市の目指す先は

―ごみ袋に関して、予定している今後の展開はございますか?

ごみ袋に関しては先日ようやく打ち出した段階なので、まずは広く皆様に認知いただけるようにしていきたい、というくらいです。

ただ、将来的なお話で言えば、本市は「環境先進都市」を目指すまちとしてサーキュラーエコノミーを進めていきたいと思ってます。市内の産業における資源循環を進めることで、資源循環とは単なる綺麗事やアピールではなく、新たな産業になるということを先陣切って示していきたいと考えてます。

今回のごみ袋がその1つのランドマーク、象徴になってくれるのではないかと期待しているところです。

 

―素晴らしいですね。市全体で次に予定している施策はなんでしょうか?

プラごみ問題という世界的な課題に対して、すでに各自治体で多様な取り組みが進んでいるとは思いますが、次は横展開してお互いに繋がっていく段階なのではないかと思います。

本市には8月に環境の情報発信を担う拠点となる環境プロモーションセンターが誕生いたします。この施設を中心にサーキュラーエコノミー、資源循環に関する情報を市内外に発信することに注力していきたいと思っています。

この発信・連携は、市内の企業や市民の皆様はもちろん、他の自治体・企業も対象としています。様々な団体が視察に来ていただいておりますし、亀岡市の取り組みを発信する講演依頼もいただいており、メディア出演も徐々に増えております。

また、連携しての実証実験のご相談もいくつか受けておりますので、みなさんと手を取り合って、多方面に施策を展開していったり、情報交換・連携協力を図っていきたいと考えています。

亀岡市の名前は、まだまだ全国に浸透しているとは言えません。なので、まだもう少し広げていく必要があるかと思います。

 

―環境配慮やSDGsを謳う自治体は増えましたが、サーキュラーエコノミーまで踏み込んだ自治体はまだまだ少ないと思います。20年以上取り組んできた説得力をすごく感じられたので、今後に注目したいと思いました。ありがとうございました。

まとめ

こうしたプラスチックの「地産地消」の取り組みが知れ渡ることで、単なる再生利用以上に、生活者の資源循環への関心を高め、さらなる分別意識を高めることに繋がる取り組みだと言えるでしょう。

また、今回の取り組みは他自治体にも広がっていくと思われます。すでに㈱富山環境整備は全国の他の自治体とも連携しており、年間約5万3,480トンのプラスチックを再商品化する計画が立っているとのこと。

全国的に見て、プラスチックごみのリサイクル用途、特に一般生活者の目に触れるような再生利用の事例はまだまだ限られていますが、こうした地域循環型のリサイクルシステムが広がることで、プラスチックごみの削減と資源の有効活用が進むことが期待されます。

 

取材日:2024.05.23

取材協力:亀岡市 環境先進都市推進部 資源循環推進課 様

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